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FIT開始8ヶ月で、太陽光発電に7兆円の補助金が必要になったかもしれない



再生可能エネルギーの固定買取制度(FIT)が始まって以来の、制度対象に認定された設備容量が発表されていました。本来は発電容量だけでなく、実際の発電量を比較してみる必要がありますが、まあ増え方の傾向を見るにはいいでしょう。
再生可能エネルギー発電設備の導入状況を公表します(METI/経済産業省)

FIT導入までの日本では割当制度(RPS)のもとで、中小水力発電や住宅用の太陽光発電、風力やバイオマスなどが中心に、わりとバランスが取れていました。

それが2012年7月から固定買取制度が始まってみると、住宅用以外の太陽光発電(メガソーラー等)だけが異常な増え方をしているのがわかります。

2013年2月末時点で、メガソーラー等は1100万キロワット(11ギガワット)ほどになっています。このうち1MW以上の容量を持つメガソーラーは640万キロワットと、太陽光発電の半数超を占めます。最近のメガソーラーブームを裏付けるような数字です。

太陽光発電以外のものは環境アセスメントも必要なので、他はすぐには増えないとは思いましたが、それにしても極端すぎる結果になりました。

2011年末の再生可能エネルギー累積導入量 2112年2月末の設備認定状況


累積導入量
(2011年度末)
認定設備容量
(2013年1月末)
認定設備容量
(2013年2月末)
太陽光(住宅) 440 95.8124.6
太陽光(非住宅) 90 574.91101.2
風力 260 57.062.2
中水力(1000kW以上) 940 0.12.3
小水力(1000kW未満) 20 0.40.5
バイオマス 230 8.414.7
地熱 50 0.20.4
(単位:万kW)


わずか1ヶ月間で2倍に増える、買取価格引き下げ前の駆け込み需要


上の表のとおり、メガソーラー等の認定は1月末時点では574万キロワットだったものが、2月末には1100万キロワットに増えています。わずか1ヶ月後で、ほぼ2倍になるという異常な増え方です。

これは4月から買取価格が1kWあたり42円→38円へと引き下げられるため、その前に申し込もうという駆け込み需要があったせいでしょう。同じようにFITを導入していた国では、毎年のように起こっていたことです。

イタリアで2011年の1年間に設置された設備容量9ギガワット(900万キロワット)よりも大きい数字。イタリアでもこの年からが引き下げられたため、補助金狙いの駆け込み需要があったことが原因でした。
【イタリア】イタリアの太陽光発電容量、ドイツを上回る[公益]/NNA.EU

同じく2011年のドイツは年間7.5ギガワットでしたが、最後の1ヶ月だけで年間の申し込みの半分が集中していたようで、まさに今の日本と同じような駆け込み需要がありました。その後ドイツでは制度が改定され、1ヶ月ごとに買取価格を引き下げる事にして、できるだけ駆け込み需要が発生しないようにしています。

メガソーラーのソーラーパネルは輸入がほとんどだという話もありますけど、たった1年でこれほど異常に増えることになったら、国内の工場の生産能力だけではとても追いつかないので、輸入品が増えるのも当然でしょうね。

かといって需要に合わせて国内で増産すると、あとで補助金削られた時の需要減に対応しきれず、リストラを迫られるか破産する、というのがQセルズなど欧米メーカーの例でした。

ヨーロッパ各国で行われていたFITは、もともとこういうバブル的な動きを引き起こしやすい仕組みです。日本の制度はそういう悪い部分も含めて欧州の猿真似をしていますから、当然ながら同じような結果を招いてしまったようです。



太陽光12GWを42円×20年間買い取ると、総額7兆円~8兆円の補助金が必要


本来はFIT制度開始から10年後に、太陽光発電の設備容量は2800万キロワットになる、という目標でした。しかし8ヶ月ですでに1250万キロワットとなると、ほぼ半分近い数字。今のペースだと、家庭の電気代負担なども予想よりも大幅に増えるでしょう。

もしこの設備がすべて42円買取となった場合、どの程度の補助金負担になるか計算してみましょうか。まずは全量買取のメガソーラーなど非住宅用のみ(1100万キロワット分)だけを計算します。

太陽光発電の場合、設備容量では12ギガワットといっても、実際の発電量はそんなに多くはありません。日射量が増えるが気温があまり高くない春先、正午あたりで瞬間的に85%くらい行きますが。昼でも雨が降って日がほとんど当たらない場合などはほとんど発電できません。
産総研:太陽光発電研究センター 「実環境における発電量」

地域により日射量も変化しますが、年間の平均稼働率としてはだいたい12%というところ。設備容量1kWで、年間1000kWhくらいの発電量とされます。2月末時点の認定設備容量は1100万kWなので、年間の総発電量は110億kWhくらいでしょうか。

太陽光発電1kWhあたりの買取価格は42円でした。ここから回避可能費用が控除された金額が、最終的な補助金額になっています。回避可能費用とは、再生可能エネルギーを買い取ったかわり、火力発電の燃料費などを節約できた分のこと。
ほくでん:再生可能エネルギー発電促進賦課金のご負担について

  買取価格-回避可能費用=再生可能エネルギー賦課金(補助金)

回避原価は電源比率によって変わり、地域ごとに差があります。ほぼ火力発電100%の沖縄電力が一番高くて、回避可能費用は約8.2円。水力や原子力の多い北陸電力が一番安く、約4.3円となってます。
回避可能原価、小口売電取引に影響も-電力会社間で開き2倍

  沖縄の場合 : (42円-8.2円)×110億=3718億円
  北陸の場合 : (42円-4.3円)×110億=4147億円

回避可能費用の全国平均がいくらになるかわかりませんが、3700億~4100億円の間くらいが、1年間に必要な補助金の総額(再生可能エネルギー賦課金)になるでしょう。

そして非住宅用の太陽光発電は、20年間の固定価格期間があります。今後20年間の買取費用の累積は、3700億円×20年なら7兆4000億円、4100億円×20年なら8兆2000億円というところ。

あとは住宅用の太陽光発電の分ですが、認定設備は124万kW分でしたので、年間発電量は12億kWhとします。住宅用は余剰買取なので、普通に計算するのは面倒です。

太陽光発電協会によると、余剰買取の42円は、全量買取の27円に相当するということでした。この数字を元にして、回避可能費用の最大と最低を比較すると

  沖縄の場合 : (27円-8.2円)×12億=152億円
  北陸の場合 : (27円-4.3円)×12億=264億円

住宅用以外に比べれば金額的には20分の1程度。住宅用は買取期間も10年間と短いので、補助金の総額は1520億円~2640億円で、メガソーラー等に比べれば微々たるもの。

それぞれ合計すると、太陽光発電12GW分の補助金総額の予測としては、7兆5520億円から8兆4640億円というところでしょうか。



補助金額の変動要因など


ここでの7兆円とか8兆円というのは、12GWの認定設備がすべて42円買取になった場合の、あくまで最大限に見積もった数字です。実際に必要な補助金額は、もう少し減る可能性もあります。

42円/kWhでの買取には設備認定だけでなく、接続契約の申し込みも3月中に済ませる必要があります。もし接続契約が4月以降になっていれば、42円ではなく38円での買取となります。
買取制度 よくある質問 | なっとく!再生可能エネルギー

42円と38円では1割くらいしか差が出ませんので、それだけでは補助金額は大して変わりません。ただ、42円のつもりで準備していたのに、38円になっては儲けが出ない、ということで設置を諦めるという業者が出てくる可能性はありえます。

または、北海道電力の場合のように受入可能容量をオーバーし、買取の対象にならない場合もあります。買取の対象になったとしても、春先など電気が余る時期には出力抑制されるので、買取量が若干減ることも考えられます。

あとは回避可能原価の影響もあります。もし化石燃料の価格が高騰して火力発電のコストが上がった場合には、回避可能原価が増えるので、それでだけ補助金の額は減ることになります。
(買取価格-回避可能原価=補助金)

ただし、火力燃料費が上がったとすれば、結局トータルでの電気料金は変わらないか上がっているでしょう。電気料金の本体部分は増えるけど、補助金である再生可能エネルギー賦課金の部分は減る、という話です。

逆に、もしも化石燃料の価格が下がった場合には、より多くの補助金が必要になる可能性もあります。せっかく化石燃料価格は下がっても、再生エネルギーの補助金は増えてしまうので、電気代はあまり下がらないというように。



ドイツやスペインより、もっと酷いことになったのかもしれない


8ヶ月で7兆円とはとんでもない金額ですが、ドイツやスペインのソーラーバブルの例を考えれば、それほど不思議でもない数字です。

参考として、2011年ドイツでは年間で7.5ギガワットの太陽光発電が設置され、その補助金総額は20年間で合計180億ユーロ(当時のレートで1兆8500億円)になる、という試算がありました。
先人に学ぶ ~ドイツの太陽光発電導入政策の実態~

当時のドイツの年間導入量7.5ギガワットに比べると、日本の太陽光発電の認定設備12.2ギガワット(2月末時点)は、1.62倍の数値になります。

しかも2011年時点でドイツの太陽光買取価格は、20~30ユーロセント程度でした(当時のレートで21円~32円)。ドイツでは設備の規模ごと買取価格が変わり、メガソーラーなど大規模なものほど安くなっていました。そのため日本の3月以前のメガソーラー買取価格42円は、ドイツのほぼ2倍です。

さらに日本とドイツとの気候の差などで、ドイツの太陽光発電の稼働率が10%だとすれば、実際の発電量が2割ほど違ってくることになります。そういった違いを元に、2011ドイツの試算をあてはめてみると

  1兆8500億円×1.62(容量の差)×2.0(買取価格の差)×1.2(発電量の差)=7兆1928億円

大雑把な計算でしたが、7兆円か8兆円の補助金が必要という数字でだいたいあっていそうです。日本でFIT対象に認定された12GWの設備すべてを20年間42円で買い取り続ける、という仮定の話ではありますが。

買取価格があまりに高かったので、日本でも太陽光発電はバブルになるだろうという予測はありましたが、ここまで極端なことになるとは思いませんでした。

しかも日本は昨年7月に始まってから今年2月末までの数字なので、まだ8ヶ月分だけです。これが1年12ヶ月単位だったなら、いったいどうなっていたことか。単純計算なら8分の12なので1.5倍ですか。駆け込み需要の影響もあるので、さすがにそこまでは行かなかったとは思いますが。

4月以降の申し込み分は38円×20年に下がるとはいえ、まだまだかなり高値での買取が続きますし、日本の再生可能エネルギーはとんでもない方向へ向かい始めてしまった気がします。



制度の見直しがされるかどうか


もし本当に20年間で7兆円の負担が必要だとしても、1年間では3500億円程度の負担です。太陽光以外の負担も含めると金額としては大きいですが、電気代に広く薄く上乗せされることもあり、まだそんなに重い負担とは感じられないでしょう。日本人1億人で分担するとすれば、一人当たり年間3500円になるでしょうか。企業の負担分もあるので、個人に直接請求が来る金額はもうすこし小さいでしょうが。

しかし今後も毎年新たな設備が増え、その買取負担も積み重なっていくので、気付いた時には年間に1兆円も2兆円も負担することになっていきます。

EEGpayment
EPAW | Wind in your hair, sun on your skin – and ebb in your wallet

実際、ドイツあたりでも最初の頃は数百億~数千億というレベルで、そこまで高くありませんでした。それが2013年現在では、年間200億ユーロ(2兆4000億円)も負担するようになっています。ドイツ人8000万人なら、一人当たり3万円というところです。
独、再生エネ正念場 増える負担金、国民に限界 :日本経済新聞

もし仮に現在のドイツの2兆4000億円水準が20年間続いたとしたら、ドイツ人は総額48兆円もの再生可能エネルギーの補助金を支払うことになります。

それどころか、今のペースでは2020年にはさらに2倍の毎年5兆円近い負担になるだろう、という予測もあります。毎年5兆円が20年続けば100兆円ですね。まあ20年が過ぎれば高値買取の期間が切れるので、徐々に下がる可能性もありますが。

TV通販とか保険のCMなどでもよくあるのが、「分割なら月々たったの○○円から」という売り文句。通販業者や保険会社は、一回に払う金額を少なく見せて売り込むわけですが。しかし最終的に支払う総額を計算すると、実はかなりの金額になるというパターンに似てます。

もちろん分割払いにも利点はありますけど、最終的に払うことになる金額がわかりにくいのが怖い所です。

FITによる自然エネルギーの補助制度も似た所はありますね。年間の負担額が増えるまで、負担の大きさに気付かないという。さすがにドイツみたいに総額50兆円規模となると、20年分割でもその負担感は隠せなくなりますが。

結果的には、そうして実感できるほどに負担が増えたことで、ドイツ政府も制度改定に向けて動き出さざるをえなくなります。すでに年間2兆円を超える負担になっているので手遅れ感もありますけど、せめてこれ以上に負担が増え続けることは避ける必要があります。
独、再生エネ負担金の増加凍結 買い取り制見直しへ - 47NEWS(よんななニュース)

日本の場合でも、太陽光だけで毎年7兆円レベルが積み重なっていくとすれば、単純計算で10年後には年間3兆5000億円の総額70兆円。20年後には年間7兆円の総額140兆円とかになってしまうんですよね。

日本は手遅れになる前に、もうちょっと補助金を効率的に使えるよう、早めにFIT制度の見直しをして欲しい所です。しかし現実には、ドイツのように目に見える形で負担が増えてからでないと、見直しの機運はなかなか高まらないものかもしれません。


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タグ : 再生可能エネルギー 太陽光発電 

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