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光熱費2倍で消費が減り、給料は下がって失業が増える 革新的エネルギー戦略



2030年代に原発ゼロにするという革新的エネルギー戦略というのが決定されたとか、いや閣議決定文を見るとそうでも無いとか、よくわからないことになっております。

政治家というのは職業柄、目先の選挙戦略(人気取り)に気を使いながら、同時に10年も20年も先のエネルギー戦略を考えないといけないのですから、いろいろと大変なのでしょう。

どちらにしろ、10年も20年も先のことなんてどうせ誰にもわからないのですから、将来に備えて戦略とやらに幅を持たせておくのはまあいいでしょう。いや、1年先や2年先のことだってろくにわかりませんけどね。

なにしろ鳩山首相の時代には、気候変動は危険で危ないから温室効果ガス削減だということで、原子力も再生エネルギーも2倍に増やすと言っていましたから。(その鳩山さんがなぜか原発再稼動反対デモに紛れ込んでいたりします)

その後、菅首相になって放射線が事故で危険が怖いから原発0だと言い出します。その管さんも首相時代には、「原発輸出が成長戦略の柱」としていたのに、今では「脱原発で経済成長だ」と調子のいいことを言い出すのですから、未来の事は本当にわからないものです。
日本の成長戦略、インフラ輸出にかかる期待|日本の原発を中東で売る -- 日本の攻勢

猫の目



  猫の目じゃあるまいし
   数年おきに”戦略”が”革新的”に変わるってどういうことだよ
 





光熱費は2倍で、家庭の負担増は消費税5%と同じくらい

30年”代”に原発ゼロというのが、30年のつもりなのか39年のつもりなのかよくわかりませんが、それが経済や生活にどういう影響を与えるのか。

政府のエネルギー環境会議が各機関に依頼して、エネルギー政策の変更による将来の経済影響を試算した資料があります。30年”代”ゼロに一番近いのは30年ゼロのケースですので、これを基準に見ていくことにします。

まずは電気代や光熱費への影響。全てのモデルで電気料金が大きく上昇すると予測されていて、負担増は避けられそうもありません。


ゼロシナリオ2030年時点国立環境研究所
AIM/CGEモデル
大阪大学・伴教授
伴モデル
慶應義塾大学・野村准教授
KEOモデル
地球環境産業技術研究機構
DEARSモデル
電力価格(実質)+ 69.1%+106.3%+116.8%(名目)
+130.3%
光熱費(名目)49.520.163.468.9

4つの機関が設定したモデルごとに数値の差はありますが、値上がりするという方向性は一致しています。最も値上げ幅が小さくなるモデルでもおよそ1.7倍、高いものでは2.3倍になると予測されています。

再生可能エネルギーの買取費用だったり、送電網の拡張、CO2排出権の購入費などなど、諸々の負担が必要ですから、タダでというわけにはいきません。

ドイツなどでも、2000年と比べれば電気料金が1.8倍以上になっているそうなので、それくらいは覚悟しておいたほうがいいでしょう。ドイツはまだ原発も残ってますし、再生可能エネルギー普及目標も達成できていない段階ですから、最終的に2倍で収まるのかどうかは知りません。

さらに、ガス代や灯油代なども含めた光熱費全体で見ると、2割~7割の負担増となっています。これとは別に政府が出した試算もあって、その結果ではほぼ2倍近くになるという予測もあります。
再生エネ普及に50兆円=原発ゼロで光熱費倍増-政府試算

仮に電気代2倍で月1万円の負担増だとしても、×12ヶ月で年間で12万円の負担増になります。光熱費2倍の場合だと月1万5千円増加として、×12ヶ月で年間18万円ほどの負担に。

消費税の5%増税では、年間で11.5万円ほど負担が増えるという試算があります。”革新的なエネルギー政策”による光熱費の倍増は、消費税5%と同じか、場合によってはそれ以上の影響が出る可能性があるわけですね。
消費税10%で家計負担は…内閣が初試算 公表予定なし


世帯構成40歳以上の夫、専業主夫、こども2人40歳以上の共働き夫婦、こども2人40歳未満の単身者75歳以上の夫婦75歳以上の単身者
年間収入300万円500万円500万円300万円240万円180万円
消費税増税による
年間負担額
8.211.511.26.27.45.5


設備投資が伸びる可能性はあるが、家計消費の減少がそれを上回る


ゼロシナリオ2030年時点AIM/CGEモデル伴モデルKEOモデルDEARSモデル
家計消費支出▲ 2.2▲ 0.7▲ 6.7▲ 8.6
民間設備投資+ 1.9▲ 7.1+13.8▲ 1.0

家計の消費支出も-0.7から-8.6で、すべてのモデルでマイナスの影響が出るとなっています。

光熱費の支払いにお金を取られてしまうと、他の部分で消費を切り詰めるというような影響が出てきます。あるいは企業の光熱費負担が増えた場合に、コスト削減のために給料減られたり、リストラということになれば、それも消費に響きます。

その代わりに、再生可能エネルギーや省エネルギーの投資など、民間設備投資がプラスになっているモデルもあります。たとえばKEOモデルでは民間設備投資は+13.8ですから、消費の減少-6.7を上回るようにも見えます。

しかし日本のGDPの60%は家計の消費。それに対して民間設備投資は20%ほどを占めるだけです。消費のマイナスの影響の方が大きいので、GDPは低下する方向に作用します。

2割を占める設備投資が伸びても13.8×0.2で、全体には+2.76ポイント程度の効果。6割を占める家計消費が減ると-6.7×0.6で、-4.02ポイント程度。いくら設備投資が増えたとしても、消費へのマイナスの効果が上回ってしまうわけですね。

また、逆に設備投資がマイナスになっているモデルもあります。消費の低迷で需要が減ったり、エネルギー価格の上昇で競争力が落ちれば、生産も伸びない可能性が高くなります。設備投資が増加するかどうかも不透明です。



GDPには年間で8兆円から45兆円マイナスの影響

ゼロシナリオ2030年時点AIM/CGEモデル伴モデルKEOモデルDEARSモデル
自然体比GDP(実質)▲ 1.2▲ 2.5▲ 2.6▲ 7.4

消費が落ちる結果として、GDPにもマイナスに作用します。どのモデルでも、エネルギー計画を変更しない場合に比べてGDPはマイナスとなり、2030年時点で実質GDPは1.2%から7.4ポイント低くなります。

影響が小さいとするモデルでも金額にすれば年間8兆円、多いものだと45兆円くらいの影響です。1年間でコレだけの影響ですから、これが10年続けば累積の影響は70兆とか450兆円になります。

GDPの減少による生活への影響を具体的にイメージするのはなかなか難しいですが、リーマンショックがあった2008年が-3.7%、翌2009年が-2.1%でしたので、それくらいのイメージでしょうか。
図録▽経済成長率の推移(日本)

「ハチに刺された程度」ですが、スズメバチに刺されたらアナフィラキシーショックで死ぬかもしれない、程度の影響はあります。エネルギー戦略の影響はじわじわ体力が低下していくようなものなので、急激な景気変動を実感する事はないでしょうが。



給料は下がり、失業者は増加


ゼロシナリオ2030年時点AIM/CGEモデル伴モデルKEOモデルDEARSモデル
雇用者報酬▲ 1.1▲ 0.7▲ 12.9-
可処分所得--▲3.0 ~ ▲20.0▲ 9.3
就業者数▲ 0.5▲ 0.2▲ 2.5-
失業率--+0.9(+2.8)

GDPが減少するので、当然ながら給料は下がり失業者が増えることになります。給料は0.7%から12.9%のマイナス。就業者は0.2から2.5の減少。

4つのモデルの中で正式に失業率を推定しているのは、不完全雇用均衡を想定しているKEOモデルだけですが、ここでは失業率は0.9ポイント増加の予測。(DEARSモデルでは簡易推計ですが、失業率2.8ポイント増加)

リーマンショックの前後でも、失業率は1%ほど上昇したのでこんなものでしょうか。クビにはならなくてもボーナスが減らされたりした例も多く、平均では5%くらい給料が下がるという影響もありました。
図録▽失業率の推移(日本と主要国)

産業への影響としては、まずエネルギーをよく使う製造業などが影響を受けると予測されています。また消費が減るために、サービス業などで も大きな打撃を受けるとされます。特にKEOモデルでは、最も打撃を受けるのがサービス業の雇用だとされています。

建設業や機械関係など、省エネや再生可能エネルギーに関する一部の産業では雇用が増えると予測するモデルもあります。それでも他の産業のマイナスの影響が上回るので、日本全体としては給料も雇用もマイナスになります。



自然エネルギーへの投資の拡大は、経済的格差を拡大させる

省エネや再生可能エネルギーへの投資の総額は150兆円になるとされます。労働者の給料は下がりますが、再生可能エネルギーなどへの投資によって収入が増える人や企業も出てくるでしょう。。
エネルギー・環境会議:省・再生エネ投資150兆円 30年に原発ゼロ、経産相が試算- 毎日jp(毎日新聞)

しかしこれを逆から見れば、総額150兆円の投資額に見合った収益を、電気代を高くして回収する仕組みでもあります。投資した資金(+利益)を回収できる見込みがあってこそ、投資が行われるわけですから。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度というのがわかりやすい例です。6%~13%くらいの利益を出せる高い価格と長期間の買取を約束するからこそ、投資資金が集まってきます。

その投資に対するリターンがどこから出てくるのかといえば、もちろん電気代を支払う企業や家庭という事になります。

よって投資される側(電力消費者)から見れば、150兆円の借金を背負わされ、その元本と利息をせっせと返済していかねばなりません。2030年時点でもまだ85兆円の借金が残っている状態で、その返済のために2030年以降も高い電気代を払っていくことになります。


2030年における電源構成とCO2制約 ―多部門一般均衡モデルによる経済評価  [PDF]

 再エネ推進によるGDPへの影響は、詳細の再エネの発電コストが十分に低減するのであれば、設備投資需要の拡大もあり限定的であると試算されているが、2030年までの整備によってそれ以降の稼働期間(再エネごとの事務局想定値)の発電量の買い取りと系統対策費用の割引現在価値(2030年時点における)を算定すれば=仮に2031年以降の新設投資がなくても=、電力消費者は2030年末において85兆円(選択肢B)もの債務を抱えていることを意味する

 将来における買取額は、その時点の家計の収入にもなるが、その時点までの再エネの推進によってきわめて大規模な所得再分配がおこなわれることに留意すべき。


消費者が払う電気代は、投資した側から見れば貸し付けた資本に対する収入というわけです。投資できるくらい資金面で余裕のある家庭や企業であれば、この収入を得ることが出来ます。

しかし、それほどの資金がない者は恩恵に与る事はできない。むしろ電気代だけを負担することになります。失業者でも赤字の企業でも、電気を使う限りは避ける事ができない負担です。

普通の商品やサービスなら買わなければいいだけですが、再生可能エネルギーは法律で全量買取が義務付けられ、その買取費用は消費者の負担になります。普通にやっていたら高くて需要のないものを、消費者に無理やり買わせて普及させるようなものです。

電気代を通して、貧しい者から豊かな者へと強制的に所得移転が引き起こされて、経済的な格差が大きくなるわけですね。

せめて雇用が増えて、失業者に仕事が生まれるなら、経済格差を縮小させることも可能だったのかもしれません。しかしそうはならず、全体として給料は下がり失業者は増える、という試算でした。仮に自然エネルギー関連で雇用が増えたとしても、他の業種で新たな失業が生まれてしまうためです。

ドイツでも自然エネルギー長者みたいなものが生まれる一方で、アパレル業界が再生可能エネルギー分担金支払いを拒否したり、電気代を払えない長期失業者20万人が電気を止めらてドイツ消費者連盟が抗議するなど、問題化しているようです。
Germany's Nuclear Phase-Out Brings Unexpected Costs to Consumers



急いては事を仕損じる

「脱原発とCO2削減は経済にもプラス」、みたいな根拠のない甘い話をする人もいますが、そんなうまい話はなかなか無いものです。

2025年にCO2を25%削減するという鳩山エネルギー計画について、「経済にプラス」だと試算した伴金美教授ですら、今回はGDPにマイナスの影響だとしているほどですから。
良いとこ取りの環境大臣試案[中編] 多角的な検証が不可欠 楽観的な阪大モデル

鳩山プランも無理のある計画でしたが、原子力と再生可能エネルギーを倍増させ、化石燃料に依存しない電化を進める事で、温室効果ガスの削減を達成する目標でした。

今回の革新的なんとかでは、45%まで増やすはずだった原子力をいきなり0%にして、もう片輪の再生可能エネルギーと省エネだけで何とかしようというのですから、そのしわ寄せで日本経済や国民生活が悪化するのも当たり前です。

せめて脱原発のためには温室効果ガス削減をあきらめるか。あるいは気候変動の防止のために脱原発をあきらめるか。それとも両方をほどほどの水準とペース配分まで引き下げるか。などを考えないと負担に耐えきれないでしょう。

そういう意味では、2030年を2030年"代"と言い換えて先延ばしにした野田内閣の判断は悪くないでしょう。ペース自体はそれほど変わっていないし、あいまいな部分が多くて評価しづらいですが。

単純に150兆円の投資を10年間でやれば年間15兆円必要ですが、100年間かければ年間1.5兆円です。それくらいのペースなら経済への悪影響を小さくできる。もっと楽観的に見れば、プラスに持っていける可能性もあるのかもしれませんし。

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タグ : 再生可能エネルギー 民主党 

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