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民主党案って誰得? 最低保障年金+所得比例年金方式を考える



民主党と、そして民主党から逃げ出した小沢さんが第一の党が掲げる「最低保障年金」なる年金制度の改革案があります。

現在の制度では、納めた保険料(+同額の税金)に応じて、一定額が支給される国民年金(基礎年金)の1階部分。その上には、報酬に比例して決まる被用者年金(厚生年金や共済年金)の2階建てで出来ています。自営業者などの場合なら、2階部分は任意加入ですが国民年金基金などがあります

民主党案では、この基礎年金部分を全額税方式による最低保障年金に変える。今の基礎年金(国民年金)は所得に関係なく支給される定額制ですが、最低保障年金では所得に応じて段階的に年金の給付が減らさられていく形になります。

さらに2階部分は被用者も自営業者も統合して、一元化した所得比例年金に変える。というのが民主党の年金制度案。

3党合意で税と社会保障の一体改革を進める事になっていますが、自民党や公明党はこの民主党案の撤回を求めているのに対して、民主党は未だに捨てきれず、なかなか進まずにいます。

民主党案は巷で人気だったらしいスウェーデンの年金制度を真似をした、とも言われますが、この最低保障年金+所得比例年金という制度の問題についていろいろ考えてみます。



最低保障年金で現在の低年金・無年金者は救われない

将来、最低保障年金を受け取れるのは、新しい制度が始まった時点で20歳以下の人だけ。どんなに早くても2016年から数えて40年は先の話です。

すでに20歳を越えている人は、基本的に現在の年金制度のままということになります。移行期間に当たる世代の扱いについては曖昧なままですが、ここに最低保障年金を出すわけにも行かないので、現行制度を続けるしかないでしょう。

最低保障年金という案は、無年金者・低年金者をなくすということからはじまったような気がしますが、今の現役世代にとっては何の役にも立たないものです。

今問題になっている未納者を減らし、将来の無年金や低年金者を減らしたいのなら別の方策が必要です。収入が少なくて保険料が払えない人には、現行の国民年金保険料の免除制度の拡充とか。収入があるのに払わない人には、強制徴収や差押など。

また、現行の制度には障害を負った場合の障害年金、本人が死亡した場合に家族が受け取る遺族年金も含まれますが、民主党案ではこれらは含まれていません。別枠でなんらかの方策を考える必要があります。



最初から”自助”を放棄して、”公助”をアテにする者を生み出す可能性

選挙の前には、最低保障年金は誰でも受け取れるかのように言っていましたが、所得比例年金に加入しないと最低保障年金部分も受け取れない形のようです。
最低保障年金、未加入者は対象外 岡田氏、特別委で示す

最低保障年金の財源は全額税方式ではありますが、所得比例年金に加入して保険料を払うことが受給条件なので、保険料方式に近いわけです。

本来の公的年金制度というのは、自分で働いて稼いだお金から保険料を納めると、将来年金が受け取れる形。多少の再配分機能もありますが、そういう点では”自助”的な意味合いが強いものです。

自助で生きてきたけど、現役時代に仕事に就けなかったり収入が少なくて保険料も払えず、そのため受け取れる所得比例年金額も小さい。そういう人に最低保障年金を上乗せで支給する、という形ならまあいいでしょう。それなら公助を受ける権利は十分ある。

問題は、最初から”公助”である最低保障年金をアテにする者を生み出してしまう可能性です。全額税方式だから保険料を1円も払わないままでも、月額7万円受け取れることになってしまう。

まあしかし民主党案でも、所得があるのに保険料を払わない人には最低年金は支給しない、ということになっているようですし、これならギリギリ”自助”の範疇と言えなくもない。
最低保障年金、支給は受給者の5割、保険料滞納者は減額、民主WT原案

”自助” である年金制度に、”公助”的な最低保障年金を組み込んでいいのか、という疑問点はありましたので、これはこれでいいでしょう。



収入が0の人をどう扱うのか?

しかし、これだと所得のない人の扱いをどうするのか? という点が問題になってきます。学生や失業中の人、専業主婦(主夫)など収入が0の人はどういう扱いになるのか、というのが気になるところ。あとは自営業者の収入をどう扱うか、という問題もあります。

たとえば所得0でも所得比例年金に加入していることにして、0円の保険料を払ったと見なす、という形にするか? これだと保険料0円なので所得比例年金は受け取れませんが、それでも最低保障年金は7万円満額で受け取れることになります。そうしないと低年金・無年金者を生み出してしまう可能性が出てきますし。

しかしそうすると、今度は労働意欲が削がれてしまうのではないか、という問題が出てきます。収入を増やして保険料を多く納めても、最低保障年金部分が減らされてしまい、年金額は増えにくくなってしまう。(後の中間層が損をする話につながる)

もちろん本当に収入がゼロだったら、年金以前に生きていくことすらできません。しかし家族の収入で暮らす場合なら、それも可能でしょう。
専業主婦は夫の給与の半分をみなし所得か、ゼロ保険料登録か

まあ、今の制度でも国民年金の3号被保険者などで、似たような問題はあるのですが。収入一定以下のパート・アルバイトも専業主婦扱いになり、夫や妻の被扶養者として保険料を払わなくても年金給付を受けられる。

よく言われるパート・アルバイトの収入の壁というやつで、保険料負担を避けるために収入を一定以下に抑えようとする意思が働き、個人の労働意欲や、企業が人を長期で雇う意欲がそがれてしまう影響がある。

一応はパートやアルバイトの厚生年金適用が拡大されることは決まりましたが、限度額を引き下げただけなのであまり効果が無いのではないか、という気もします。
パート45万人対象 社会保険適用拡大で政府・民主 年収94万円以上


[PDF]  ②所得比例年金への一本化と税財源による補足給付の組合せについて

○この体系が採用されているスウェーデンでは、年金額の高低のみで保証年金の支給が決まる。本人や配偶者の所得や資産による給付の制限は設けられていない

○我が国で同様の仕組みは受け入れられるか。
 ※スウェーデンでは高額年金者の夫を持つ専業主婦や、相当の資産を保有する低年金者にも保証年金を給付

補足給付に所得・資産要件(ミーンズテスト)をかけるとすれば、相当な規模の人数に対してミーンズテストを行うこととなるが、これは可能か。
 ※年金受給者は約3,000万人。現在ミーンズテストを行っている生活保護の被保護者数は全体でも103万人



所得比例年金で得をするのは高所得者層


所得階層別の所得代替率(平成21年度)

現行の2階部分にあたる厚生年金・共済年金(被用者年金)も報酬に比例した年金ですが、これにはある程度の所得再配分機能があります。

上のグラフのように、低所得者ほど手厚く配分するので、所得代替率は高くなる。もちろん高所得者の方が年金額そのものは多くなりますが、低所得者ほど手厚くはないので所得代替率は低めになる。

しかし民主党案の所得比例年金だと、年金額が所得(に応じた保険料)の影響をより強く受ける形になり、所得再配分機能は無くなります。

その代わりに、税金による最低保障年金の部分が再配分機能を果たすのでしょう。しかし、最低保障部分は支給される人の範囲が狭くなっています。そのため、最低保障年金が支給されない中間層以上では、再配分機能が弱くなります。

その結果として、高所得になるほど年金額が急激に上がる形になり、一部では現在の年金制度よりも格差が拡大するという現象が起きます。

民主党案の問題点 スウェーデン方式への移行は格差を拡大する(2)


民主党案の問題点 スウェーデン方式への移行は格差を拡大する(3) [PDF]

・最低保障がかからない部分については、報酬の高い人ほど今より年金額が高くなり、しかも報酬の高い人ほど増額幅が大きくなるというおかしなことが起こる

-ただでさえ政府の所得再分配機能が小さいわが国の所得再分配をさらに小さくすることになる


最低保障年金+所得比例年金をあわせると、中間所得層が一番損をする

まず低所得者には最低保障年金が入るようになるので、今の制度では無年金・低年金になってしまう人は得することになります。

一方で高所得者はといえば、最低保障年金がカットされるから損をする。かと思いきや報酬比例部分では、今まで再配分のために負担していた分が無くなる。そのため所得の多い人ほど、所得比例部分ではむしろ得をすることになります。

そして、どっちの恩恵も受けられない中間所得層が最も損をする、という形になります。ちょうど最低保障年金がもらえなくなるあたりの人で、年金額の減り方が最も大きくなります。

あとは最低保障年金の財源のための税金負担の問題もありますね。この部分を消費税でまかなうのか、所得税なのか埋蔵金(?)なのかによって、それぞれの損得も多少は変わってきます。
消費増税、さらに最大6・2%…新年金で再試算

しかしどういう方法をとるにしても、最も人数の多い中間層への負担増は避けられないでしょう。そうして低所得者と高所得者の一部は得をするが、中間層にしわ寄せが行く。何をしたいのかよくわからないシステムが出来上がることになります。

低所得者ががんばって収入を増やして所得比例の保険料をたくさん払うほど、最低保障部分が減らされていくので、受け取れる年金額は現行制度よりもゆっくりとしか上がらない。(ある程度以上の稼ぎがある高所得層まで行ければ別ですが)
最低保障年金の支給範囲 [PDF]

そうなると、低所得者が収入を増やそうとする意欲を奪ってしまう。あるいは、中間層から低所得へ落ちてしまう事への抵抗感が小さくなってしまう、という影響が考えられます。

民主年金試算:打撃、中間所得層に 低所得増へ税集中投入民主党 年金試算:打撃、中間所得層に 低所得増へ税集中投入 - 毎日jp(毎日新聞)

 試算によると、最も給付が手厚い案でも、年収が400万円強を超す人は現行制度より受給額が減る。同党は最新の将来人口推計を基にした新たな試算をする意向だが、中間所得層の給付減を防ぐのは難しいとみられる。

 一方、今の基礎年金の保険料で賄っている部分は、所得が高く、保険料も高い人が低所得の人を「支援」する仕組みとなっている。このため、基礎年金を廃止すれば高所得の人は低所得の人への支援が少なくて済むようになる

 結局、現行制度で「支援額」が多い高所得の人ほど有利になり中間所得層は税による 補助がなくなる分、打撃を受けることになる。



年金を一元化すると、自営業者は保険料0円で月7万円の年金がもらえる?

所得比例年金は一元化して全ての国民が加入するそうですが、どうやって各個人や世帯の所得を把握するのか、という問題があります。俗にクロヨン(9-6-4)、トーゴーサン(10-5-3)とか言われますが、会社員は所得の9割~10割を把握されているのに、自営業者は5割~6割、農林水産業では3割~4割しか把握されていない、という意味。

自営業者は経費参入がやりやすいので所得をごまかしやすい。鳩山由紀夫さんが大きな子供手当ての贈与税を申告していなかったり、橋下徹さんが2500万円の経費を申請したが認めらず修正申告になったりする例もありましたが、脱税だか節税的なことは日常的に行われています。

それに対して会社員や公務員なら、ほぼ完全に所得を把握されていますし、医療費などを除けば経費もほとんど認められない。その代わりに給与所得控除などはありますが。

こうした所得把握の不公平があるため、自営業者は厚生年金や共済年金とは分けられていて、国民年金基金や民間の確定拠出年金を利用することになっています。これは自分の払った保険料の額に応じて、年金の給付額が決まる方式です。よって、払った分以上に受け取るというような不公平はありません。

しかし、これを自営業者も含めて一元化して、最低保障年金と所得比例年金に国民全員が加入する、民主党案のようにすると何かと問題が出てきます。

弁護士などの資格業や八百屋などの自営業者は、経費を多くすることで帳簿上の所得を小さくすることができます。所得が小さければ、所得比例年金の保険料はほんの小さな額しか払わなくて済む。

極端な例ですが、赤字で所得比例年金の保険料の支払い0円でも、最低保障年金の7万円が受け取れてしまう、という制度の抜け穴ができるかもしれません。本当に収入が無いのならそれでもいいですが、帳簿上は低所得でも本当はそれなりの収入がある人も含まれてしまう可能性はあります。

実際に韓国では、被用者と自営業者を同じ年金に一元化してしまったために、この手の問題が起きています。


韓国の公的年金制度の概要 [PDF]
2006年3月24日

• 自営業者と民間被用者が一元的な制度に加入しているため、自営業者が所得を低く申告することによる不均衡が生じている。



少子化と”みなし運用利回り”で、不安に怯える老後が待っている

スウェーデンモデルをコピーしてきたらしい民主党の年金案には、年金の給付水準を調整する仕組みとして「みなし運用利回り」というのが出てきます。
「あるべき社会保障」の実現に向けて 社会保障と税の抜本改革調査会 [PDF]

みなし運用利回りとは、年金の運用利回り=現役世代一人あたりの賃金上昇率 などと”みなして”年金の給付額を決めること。人口が増えたり経済成長で給料が上がれば、年金額も増えていくことになります。

しかし逆に、現役世代の人数が減ったり、国民一人当たりの稼ぎが減れば、年金額もどんどん下がっていく仕組みでもあります。

スウェーデンは出生率が1.80程度であったり、あるいは外国からの移民を受け入れて人口をバランスさせることで、年金給付水準を維持しているわけです。

出生率が低く移民もいない日本でスウェーデンと同じ事をやったら、あっという間に年金の給付額が引き下げられてしまい、高齢者は生活できなくなってしまいます。


スウェーデン方式への移行のその他の問題点 [PDF]

保険料率を固定するので財政の自動均衡措置が必要であるが、わが国の高齢化のスピードはスウェーデンより非常に速い

-スウェーデンでは「合計特殊出生率1.80、移民がある程度存在」という前提で作られている
(我が国は1.26、移民は少ない)

-わが国では自動均衡措置が最初から継続して発動されるだろう
・・・基本原則③「負担と給付の関係が明確な仕組みにすること」に反する

-わが国には既にマクロ経済スライドが導入されている


とはいえ今の日本の制度でも、すでに年金財政を調整する仕組みとしてマクロ経済スライドが導入されているので、少子化が進み、給料が下がる限りは、年金の給付額も下がっていきます。

おかげで年金財政が破綻する心配は少ないですが、その代わり年金給付が減って老後の生活は破綻します。スウェーデン方式だろうと抜本的改革だろうと、「老後の安心」の役には立ちません。
年金制度の危機はスウェーデンにも

なんにしても年金の給付水準を維持するためには、

  • 少子化を解消して人口を維持する (移民でもいいけど)
  • それが無理なら定年引き上げなどで、高齢者が支え手(現役世代)に回るようにする
  • 経済成長で一人当たりの稼ぎを増やす

くらいしか手がないわけです。

民主党案の実現に必要な追加費用について、最初は最大で消費税7.1%分となっていましたが、その後に出生率が少し上がったので消費税6.2%分まで下がった、というのがわかりやすい例ですね。



人気取りのための抜本改革では誰も得しない

民主党の年金案によって得する人や損する人はいろいろ出るでしょう。しかしそれで年金制度全体の問題が何か解決する、ということはありません。

新制度の完全移行には半世紀はかかるので、今ある未納問題は解決しない。無年金者、低年金者を減らしたいなら、保険料の納付率を引き上げるのにどうするか? という方策でも話し合った方がよほど建設的です。

年金給付を維持して老後を安心できるようにしたければ、何の役にも立たない「ネンキンのバッポンカイカク」議論なんぞしていないで、少子化対策や経済対策でも考えた方がいい。どんな仕組みにしようと、少子化だったり給料が下がり続ける限りは、年金も減り続けるのですから。

民主党の年金制度案が実現する可能性などまず無いと思いますが、もし何かの間違いで実現したとしても今の日本にメリットらしきものは何もありません。むしろ中間層への打撃だったり、自営業者も一元化する弊害だったり、デメリットの方が大きいと言ってもいい。

結局この年金案で一番トクをしたのは、選挙で票を集めることに成功した政治家だったのかもしれません。口先だけの抜本的改革~とやらで人気取りに走るのもいいですが、まず目先の問題に対処してからにしてほしいものです。今さらこんな年金案を掲げ続けていることが、本当に人気取りになるのかどうかもわかりませんが。

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タグ : 社会保障 年金 

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コメント


実は国民年金未納の在日などには
非常にありがたいのがこの案だったりします。
それに気がつくとすべての謎が溶けますよ。

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