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自然エネルギーで瞬間停電が増加したドイツに停電補償制度が創設される



ドイツではここ3年間で、電圧や周波数の変動、瞬時の停電などが30%ほど増加しています。安定した電力供給の質が低下しているようです。
Instability in Power Grid Comes at High Cost for German Industry (電力網の不安定さがドイツの産業に重い負担を強いる)

そのため停電などで被害が出た場合に、損害額の一部を補償するための法案が作成中だということです。電気料金に保険料を上乗せして徴収し、停電時にはそこから保険金を支払う。こうした停電保険のような仕組みを、法律として整備する方針です。

ドイツ 製造業に停電保障実施へ
  • 昨年7基の原子炉を止めて以来、送電網が以前に比べて不安定な状態。
  • 広域停電を防ぐために強制停電が実施された場合、当該地域の大手電力需要者(メーカー等)へ電力会社から最高600万円/年の補償を受ける事が出来る法令案が作成中。
  • 電力会社はこの補償費用を小売価格に上乗せする事が出来る。
  • メーカー各社は「瞬間停電や電圧変化が多発すると、産業立地ドイツの魅力が減る」として政府に電力の供給安定確保を求めていた。

電力供給の不安定度で停電被害などのコストが増加

精密な製造装置を使用する企業では、ほんのわずかな電圧変動や100分の1秒単位の瞬間停電でも、大きな損害が出てしまいます。

ノルスク・ハイドロ社のドイツハンブルグ工場の例では、電力が1ミリ秒(1000分の1秒)の瞬断で製造装置がストップし1万ユーロ=100万円の被害額。昨年来からの合計では50万ユーロ=5000万円を越えているとのこと。
Merkel's Switch to Renewables: A Lack of Direction in Berlin

日本でも、2010年に0.07秒(7ミリ秒)の間、電圧が通常の半分まで落ちる瞬間的な電圧の低下があり、東芝の半導体工場やコスモ石油の製油所など、146件に被害が出たことがありました。
瞬時電圧低下が及ぼす事業中断リスク [PDF]

ドイツの電力消費者は再生可能エネルギー補助のために電気料金の上昇というコストを支払っていますが、さらに瞬間停電や電圧変動による損害という形で、別のコスト負担も背負っていることになります。事故などに繋がる危険もあり、これも企業やそこで働く従業員にとっては重荷になっています。

ドイツ商工会議所のアンケートでは、60%の企業が瞬間的な停電や電圧の変動などを恐れていると回答。電力供給の不安定さからドイツ国外へ工場移転した企業がすでに9%、さらに移転計画中が6%ほどあるということです。
エネルギー価格の上昇がドイツの産業を危機に  [google翻訳]


独産業界が電力供給の信頼度低下に警鐘

 ドイツ経済紙が2011年12月29日に明らかにしたところによると、産業需要家の団体であるVIKのシュヴィヒ会長は「(福島第1原子力発電所の 事故を契機とした脱原子力をはじめとする)エネルギー政策転換により、ドイツの電力供給の信頼度が低下している」と述べ、それにより「複雑な生産工程にお ける安定性が脅かされている」との警鐘を鳴らした。

 ドイツの電力供給の信頼度については、3分以上継続する停電をまとめた統計でみると、停電時間は1軒あたり年間約15分となっており、国際的にも高い水準が維持されているとみられてきた。

 しかし、3分以下の停電や電圧変動は増加しており、産業需要家に及ぼす影響は大きくなりつつある。

  世界3位のアルミメーカーで、ドイツ国内14カ所で工場を稼働しているノルスク・ハイドロ社(本社・ノルウェー)は、2011年12月27日に電力系統規制庁のクルト長官に宛てた書簡で、2011年には同社のドイツ国内の工場で度重なる停電を経験したほか、2011年7月20日には電圧変動により約20万ユーロの被害を被ったと報告している。


風力発電や太陽光発電など不安定な電源の増加が一因

電力供給不安定化の一因とされているのが、発電量が自然変動する電源の増加です。水力発電や地熱発電ではこの種の問題は小さいですが、風力発電や太陽光発電などでは天候次第で発電量が大きく変動します。

例として風力発電の出力変動は下のグラフのようになっています。
九州電力 リアルタイムデータ(長島風力発電所)

長島風力発電所2012年8月30日.gif 長島風力発電所_2012年9月3日.gif
赤線が発電量(左目盛り)、点線は定格出力(同じく左目盛り)、青線が風速(右目盛り)


左のグラフでは一日中で細かな変動を繰り返しています。昼前後は4万キロワットと定格出力の80%ほどですが、夕方にかけて急激に発電量が下がってゼロに近くなり、かと思えばまた急に上がったりと、発電量は大きく変化しています。

また右のグラフのように風が弱いと、一日中ほとんど発電できないまま、という日もあります。

風力発電の年間の平均稼働率は20%くらいとされますが、ずっと20%近辺で安定しているわけではありません。瞬間的には発電量が0になったり、逆に定格出力の80%程度まで上がる事もあります。

電力の需要と供給は一致させないと電圧や周波数がズレたり、停電が起きたりします。そこで風車が止まって発電量が減った時には、代わりに他の発電所の発電量を増やす。逆に風が強くなって発電量が増えれば、他の発電所を止める、という具合です。

しかし、ごく短い時間に急激に変動したりすると他の発電所で対応しきれず、電圧の変動や瞬間停電などにつながります。天気予報である程度の予想はできますが、予測が外れて大きくずれることもよく起こります。


風力・太陽光、全量買い取りで大量導入へ 先行スペインの悩みに学ぶ

…再生可能エネルギーは不安定な電源だ。例えば「スペインでは(天候の変化などにより)1時間のうちに再生可能エネルギーによる発電量が最大1万 3000MWから150MWまで振れることがある」(同氏)。

電力では供給と需要の規模を合わせないと電圧変動や停電の恐れがあって危険だ。つまり1万 3000MWが150MWに急降下したら、その差の1万2850MWを他の電源で補わなければならないのである。


送電部門のコスト増加も電気代の値上げにつながる

再生可能エネルギーの導入のためには、送電線の建設など送電ネットワークの強化も必要です。送電線の敷設、変電所の設置など、電力網の維持管理もタダではないので、当然ながら電気代は値上がりする事になります。
ドイツ、風力や送電網に26兆円必要

ドイツでは今後12ヶ月間で、1kWhあたり3~5ユーロセントほど電気料金が値上げされる可能性があるという事でした。おおよそ、10%とか20%程度の値上がり幅です。再生可能エネルギーの買取費用は1.5ユーロセント程度の増加という予想があるので、値上げ幅の残り半分は送電部門に関する費用ということになるでしょうか。
Germany's Nuclear Phase-Out Brings Unexpected Costs

実際にドイツではこの8月にも電気料金の値上げ(年間で71ユーロ=7100円ほど)があったようですが、これは再生可能エネルギー買取費用の分担金とは別なものです。
ドイツ 電気料金値上げ


[FT]原発停止の影響にもがくドイツ  (2012年3月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

…「冬は何とか乗り切った」。ドイツに4つある地域高圧送電網の1つを運営するオランダ企業テネットで、北部コントロールセンターの責任者を務めるフォルカー・ヴァインライヒ氏はこう話す。「だが我々は幸運だったし、次第にできることの限界に近づいている」

 ハノーバー郊外にある何の変哲もない低層ビルに拠点を構えるヴァインライヒ氏と同僚たちは、北海とアルプス山脈を結ぶテネットのケーブルの電圧を維持し障害を回避するために、2011年に合計1024回も出動しなければならなかった。前年実績の4倍近くの回数だ


風力発電や太陽光発電の外部不経済

風力発電や太陽光発電には、電圧や周波数変動など消費者に不利益をもたらす性質がつきまとうのですが、その不利益の解消は外部に任せきりになっているのが現状です。

たとえば風力や太陽光の出力変動の調整役にされる事が多いガス火力発電所では、稼働率が大幅に低下して採算が取れなくなっています。そのためガス火力発電所への投資が進まず、必要な発電所が増えないため、今度はガス火力発電所にも補助金を出す、という本末転倒な事態になっています。

送電網の拡大も必要なのですが、これもなかなか建設が進まないために政府の支援策が必要となっています。これらの補助金は税金から出されることになるので、電気代以外の部分でも負担が増えてしまいます。

ヨーロッパは各国の電力網が繋がっているので、ドイツ国外の電力網にも風力発電などの影響が出る例も起きています。隣国のベルギーやチェコなどでは、ドイツからの潮流対策に移相変圧器の設置が必要になったりと、国外にも問題が出ています。

停電の補償制度というのも、保険料が電気代に上乗せされるような形になります。個別の企業だけで停電のリスクを背負うよりは、全ての消費者にリスクを分散させて負担した方がいいのかもしれませんが、根本的な解決とはなりません。


外部に不利益を押し付けずに、対策に必要なコストを内側に含めること

外部不経済というと公害などの問題が代表的ですが、必要なコストを内部化することが解決の第一歩になります。

風力発電の公害問題としては騒音被害やバードストライクなどがあります。これも今までは外部に押し付けられていた不利益ですが、日本でも風力発電に環境アセスメントが実施される事になるので、対策を取っておけば影響を抑えることができます。

風力発電や太陽光発電の変動に起因する問題というのも、何らかの方法でコストを内部に含める形に持っていくことが必要です。

たとえば風力発電には蓄電池をセットで設置することを義務付けて、出力の変動を平準化する、というのは有効な手段です。しかし蓄電池はコスト的にも技術的にもまだ未熟なので、現実的には難しいかもしれません。

対策に必要な費用を負担してもらうという意味で、風力発電事業者太陽光発電事業者のもうけに税金をかける、という方法もありますね。系統負荷税、とか適当な税目を作って。

取ってきた税金は停電の補償金や、送電網やバックアップ用発電所の整備への補助金に使う。あるいは、蓄電池などの電力貯蔵技術の研究開発費に回す手もあります。

蓄電池を設置して出力変動対策をしている業者からは税金を取らない、という形にすれば出力平準化技術の研究や開発投資へのインセンティブにもなります。

とにかく電力消費者の負担ばかりが無制限に増えてしまうのは制度的欠陥なので、何かしらの対策が必要でしょう。

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タグ : 再生可能エネルギー ドイツ 風力発電 

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コメント


ちょっと疑問なのは、
こういう問題で、今後ドイツは実際にどのくらい衰退するのだろうか?
というポイント。衰退の物差しが、感覚的に良くわからない。
例えば、東京が群馬になるとか、そういう物差し。

出力に合わせないなら独立が基本だ。

太陽光発電を長期的には推進すべきだ。
が、発電法人の責任とは、もともと 「供給に合わせて」 発電することが絶対だ。
今の日本もドイツも、太陽光や風力という不安定発電と発電法人とを無理やり結びつけようとするから、おかしな話となっている。
植物がそうであるように、地上における不安定エネルギーの利用を基本的に還元蓄積作業専用とすべきだ。あさはかな人類も、それに気づいて、長期的には、そうなるだろう。
が、惰性で商用電源への組みこみも続くだろう。商用発電に不安定電源を接続するなら、蓄電池の併設を義務化すべきだ。

電気を水やガスと混同している無知な連中が、太陽光発電パネルを 「太陽電池」 と呼んでいる。が、太陽電池でない。電池と呼ぶべき対象は太陽自体だ。地上にあるものが、太陽から到達している光の変換装置だ。任意のときに残量を取りだせないものを電池などと呼ぶことも、おかしな政策を推進させている一因だ。

このブログの別記事にもあったけど、富裕層から貧困層への搾取の方法でもあるよね。
電力会社を間に入れた税金みたいなもんだと思う。
個人どころか企業が投資して、結局は普通に電気を使ってる(高圧契約とか太陽光つけてる人は相殺できたりでそこまで影響ない、又は利益になる事もあるのかな)人がお布施するシステム。
ここまで不況じゃなかった総中流時代もこんな手法があったのかは分からんけど、エコっていう旗の元にやり方がエゲツナイ。

問題があるところに、ビジネスチャンスです

このサイトは、面白いですね。

現在事業者として各種研究会に参加していますが、
研究者達は、電力変動等についてははっきり起こると言っていますね。

だから当方は事業開始に行政の申請手続きが非常に大変ではありますが、電力変動の少ない24時間発電タイプの小水力、地熱を選びました。

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