スポンサーサイト



上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事をブックマーク

固定価格買取制度が既存の風力発電などの赤字補填にも使われることに



2012年7月から再生可能エネルギーの固定買取制度(FIT)が始まりました。もともとは自然エネルギーの新規導入を促すことを目的としていて、この固定買取制度の対象になるのは新規に設置された発電設備だけのはずでした。

ところがいつの間にやら、過去に設置されたものまで固定買取の対象になり、高い買取価格が適用されることになっています。
再生エネ:既存設備も買い取りへ…固定価格買い取り制度

これら既存の発電設備に新たに高い買取価格を支払ったところで、再生可能エネルギーが増えるわけではありません。発電量は今までと同じでも発電事業者に支払う費用は増えてしまい、消費者の負担だけが増えてしまうことになります。

RPSからFITに乗り換えると買取価格は2倍以上に

日本では2003年から、電気事業者への新エネルギー調達割り当て(RPS)制度で自然エネルギーなどの買取が行われていました。

このRPS制度の適用を受けているものに関しては、FIT導入後もそのままRPS制度での買取を続けるはずでした。それがなぜか、RPSからFITへの乗換えを可能にする方向に変わっています。

RPS制度での風力発電などの買取価格は、だいたい10円~11円前後でした。新しく始まった固定買取制度での買取価格は、風力発電は23円(20kW以上)や57円(20kW未満)などとなっていて、およそ2倍から3倍の買取価格が設定されています。

RPS管理システム 新エネルギー等電気等の価格について
〔加重平均価格の推移(単位:円/kWh)〕
  H17年度 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度
風力 11.0 10.7 10.4 10.4 10.1 10.0
水力 8.4 8.4 7.2 8.9 8.6 9.0
バイオマス 7.6 7.7 7.8 8.0 8.7 9.4


平成23年度ぶんのRPSの目標電力量は128億kWhでしたので、これをすべて10円/kWhで買ったとして計算すると、年間で1280億円の費用がかかっていたことになります。
(過去の実績では、調達量は目標より2割ほど上回るので、実際はもう少し多いかもしれませんが)

仮に128億kWhすべてを20円/kWhでの固定買取に移行させると2560億円、30円/kWhで買い取るなら3840億円になります。RPSからFITへ乗り換えると、単純計算で年間1000億円とか2000億円規模の追加費用が必要になります。

ただしRPS対象の設備は、別の各種補助金を受けているので、受け取った補助金分は買取価格から差し引くことになっています。そのため、RPSから切り変えた場合の買取価格は、新規の設備よりは安い価格になります。

ま た、設置してから経過した年数だけ買取期間は短縮されるので、高い価格の期限が切れるまでの期間が、新規設備より少し早くなります。RPS制度が始まった のが2003年なので、もっとも古いもので残存期間は10年ほど。新しいものなら20年近く残っていることになります。

仮に毎年1000億円単位の追加費用が発生するとして、それが残存期間の10年~20年程度続くことになると、累計で1兆円~2兆円程度の負担増になることになります。

自然エネルギー業界のロビー活動と政治主導の成果

すでに設置されていた設備を追加で固定買取にしたところで、再生可能エネルギーの発電量は今までと同じです。それでいて買取費用はかさむので、電気代の上乗せとして消費者の負担する額だけが増えることになります。

既設の設備はRPS制度などをそのまま続ける、という方針だったはずですが、発電事業者サイドから「固定買取の対象にして欲しい」というような要望も出ていたようです。結局はこの要望がそのまま通ってしまったようです。

一部では「政治家へのロビー活動が行われていた」、というような話もあります。そうしたロビー活動の成果によって、当初の想定が覆され、既存設備も買取対象になった、ということなのかもしれません。これも”政治主導”なるものでしょうか。

普通はこれだけの負担増という話になると、予算を要求する段階で財務省のチェックを受け、予算審議では国会のチェックも受けることになります。しかし固定買取制度の財源は税金でなく電気代なので、チェックされることもなくそのまま通ってしまいます。

風力発電事業が赤字だらけの理由

 しかし、一部には、「既存風力発電所も対象にし、高く買い取るべき」という声がある。政治家へのロビー活動などをしているという話も聞こえてくる

確か にこれまでの風力発電事業は、黎明期で知見が少なかったために、事業が行き詰まった事例もある。それは確かだが、固定価格買取制度は国民に負担を求める制 度だ。

その買取価格を高くすることで国民にどんなメリットがあるのかを、きちんと国民の前で説明することなくして、政治家にロビー活動をする、そんな形で 高い買取価格を求めるのはおかしいだろう。


調達価格等算定委員会(第1回)‐議事要旨

委員
今まで補助金を基に発電を行ってきた事業者がいると思うが、このような事業者は本制度の対象となるか。
既設設備の扱いについては、買取制度小委員会の議論とは異なる結論となっている。これまでの議論と現状を比較したものをまとめていただきたい。

事務局
従来の設備については、再生可能エネルギー特別措置法の附則におい て、RPS法の一部規定について当分の間効力を有することとされており、この規定に基づきRPS制度の下で運転を継続することを想定している

ただし、何 とか買取の対象としてほしい、という事業者からの要望があることも事実。まだ結論は出していない。


支援してくれないと既設の風力発電が続けられないよ?

風力発電境界(JWPA)が調達価格等算定委員会に出した要望書を見てみると、既存の発電設備も固定買取の対象にして欲しい、とそのままズバリと書かれていました。

資料5 日本風力発電協会 説明資料(PDF形式:458KB)

Ⅱ7 既存の発電施設についても、操業が継続できるよう固定価格買取の対象として頂きたい

・既存の風力発電所には、種々の要因により事業性が悪化し、操業の継続が困難となっているものが尐なくない。

・国会附帯決議*の趣旨に則り、既存の発電施設も固定価格買取の対象とすることで、発電所の操業継続を支援頂きたい

– また、既存発電事業の採算が改善されない限り、風力発電事業者による新規事業への再投資は困難であり、したがって風力発電の新規導入も進まない


JWPAが既存設備の買取を主張する理由の一つ目は、経営が苦しいと既存の発電所の操業をやめるかもしれないので、操業継続のために支援して欲しい、ということ。

風力発電協会の主張が本当だとすると、風力発電の未来はかなり暗いものになってしまいます。

も し固定買取制度の適用になったとしても、いずれ20年後には高値での買取期限が切れます。その後は、他の電源と同じ程度の市場価格で電気を売ること になる。そうなったときに採算が取れないとなると、風力発電の操業が止まり、大量の風車の残骸がそのまま放置されることになってしまいます。

あるいは、また20年後になったら「操業できないので支援してくれ」と要求してくるのかもしれませんが。もしかしたら一生自然エネルギーに高いお金を払い続けるのではないかと、将来が不安になる話です。


本当のところはどうでしょうか。火力発電やバイオマス発電と違って燃料はいらないので、風力発電のランニングコストはそんなに高くはないはずですが。

既存設備への追加の補助金なしでは、風車を回しても赤字しか生まない、というのであれば、いっそ放棄してしまった方がいいのではないかと思います。もしかしたら別の業者が風車を安く買い取って、代わりに操業してくれるかもしれませんし。

経営が苦しいままだと、新たな風力発電所が増やせないよ?

JPWAの主張の二つ目としては、既存の発電事業者の経営が苦しい状態では、新規の設備が増えない、というものです。風力発電には専門的なノウハウが必要なので、既存の業者の力が必要である、という主張です。

たしかに風車を建てるには環境アセスメントも必要ですし、太陽光発電に比べれば風力発電には難しい部分もあるでしょう。

しかし公的な制度で支援を受けたいということなら、既存事業者の財務内容のチェックなどは最低限やるべきでしょう。東京電力の値上げは財務内容まで厳しくチェックされているわけです。同じ電気代の値上げに繋がる話でありながら、何の検証もしないで支援を決めてしまう。いくらなんでも甘すぎる話です。

親族の生活保護を受けていたお笑い芸人なども、問題視されていました。公的な制度で支える以上は、本当に必要なところにお金が行っているのかどうか、よく監視するあります。

そもそも既存の発電業者を支援した場合、支援しなかった場合で普及速度にどれほどの差が出るか。という部分を検証する必要もあったはずです。

しかし現実には、支援することに正当性はあるのか、社会的にプラスの影響があるのか、ということについてほとんど何の議論もないまま適用が決まってしまいました。

第3 回 調達価格等算定委員会 議事録 [PDF]

○山内委員
時間もあれなので質問をもう1 点だけ。16 ページの地方自治体の風力のことですが、お書きになっているように意義は非常に重要であると思うのですが、ただ、これですと事業が苦しいのでその分高くしてというようなイメージに取られるのではないか。それはしかし、今回の買取制度の趣旨からいくと尐し違うのではないかという気がするのですが。

○永田代表理事
私は両方やっている立場から言うと、特に風力の場合はなかなか新規事業者が出てきてやるには難しい事業だと思うのです。太陽光は、誰でもできるとは言わないですが、それほど難しい事業ではない。

そういうことになりますと、風力をこれから新設分を増やそうとして誰がやるのだということになると、やはり既設の事業者がやらざるを得ないということで、今の既設の事業者が新しく手を出せるような余裕が生まれるような面からもご配慮いただいて、イコールフッティングで既設分に対しても新設分と同じ扱いをしていただいて、その余力で何とか新設分に手を出せるような余力を持たせていただければと考えているわけで、何か特別扱いで高く上乗せするとかそのようなことではなくて、同じ条件で同じように、それで今までいただいた分は当然織り込んで減らしていただいて結構だという趣旨です。

○山内委員
ありがとうございました。


消費者の負担を増やしてまで救済する価値のある企業かどうか

新規の事業者と既存事業者の公平性、というのも理由としています。たしかに高い補助金目的に湧いてきた最近の有象無象よりは、初期から頑張ってきた業者をな んとかしてやりたい、というのも気持ちとしてはわかります。RPS制度でも補助金が出るとはいえ、たしかに現在のFITほど恵まれた条件ではありませんで したし。

とはいえ、買取にかかる費用はすべて電気代の上乗せとして消費者に負担が行くことになりますから、安易なバラマキ的制度にすべきではありません。せめて既存事業者を支援する正当性についての説明が無いことには、負担する消費者と供給者の間の”公平性”が保てなくなってしまいます。

そもそも事業者は、補助金を受ければRPS制度でも利益を出せると考えたから参入したはずです。採算が取れる見通しを持っていたからこそ、風車を建てた。そこから先で経営がうまくいかなかったのは、事業者自身の責任でしかない。

RPS制度は多少なりとも市場メカニズムが働く制度だったのですから、効率化できず競争で不利になった企業の経営が苦しくなるのは仕方のないことです。

既存の業者は先駆者だと一口に言っても、中身は玉石混交です。経営に失敗して本来なら淘汰されるべき企業まで救済してしまうことにもなります。

高すぎる自然エネルギー買取価格は業界を歪ませる
太陽光42円、風力23.1円・・・ 価格案決定の背後で起きていること

国民負担で 失敗風力を救済?

 しかし、大切な事が抜け落ちている。民間事業者は、自社の風車の発電量を公開していない。財務内容、故障履歴などの開示もない。民間の既存風力は初期投資に約3分の1弱の補助金が出ており、その申請の際の事業計画書では採算が取れることを宣言しているのだ。

 どんなビジネスでも常にリスクは伴う。固定買取という国民が負担する制度で、ある種の救済を求めることは、厳しく言えばプロでなかったことを自ら認めることである。大前提として、発電量と財務内容、故障などの情報開示を強く求めたい。


各地で自治体が建てた風車にも赤字のものが多い、ということも報道されています。風力発電協会によれば、そうした自治体は先駆者として挑戦してきたのだから特に配慮すべきだ、という主張でした。
自治体の風力発電 6割が赤字

しかし実際の事例を見てみるとそれ以前の問題で、いいかげんな運営が行われている場合も多い。熊本県の設置した風力発電の場合、風車を建てる前の風向調査などをしっかりやっていなかった、ということが赤字の原因となっています。

風車がうまく回らずに発電量が落ちる、さらに不安定な風によって軸部分に負荷がかかって故障する、などの問題が発生したとのこと。

この熊本の風力発電所も、固定買取制度での買取価格の引き上げを求めるそうです。事前調査の問題などの責任を負うこともなく、負担だけ消費者につけかえることになるわけですが、無条件に救済していいものでしょうか。

阿蘇車帰風力発電赤字計1億円 風少なく発電量伸び悩み

 ところが、運転開始後、羽根の上部と下部で風向きや風速が異なったり、風車の前後でも風向きが違ったりして、スムーズに回らない事態が続出。軸部分の故障も発生した。県企業局は「調査で分からなかった想定外の風が吹いた」と説明する。ただし、風車の軸部分は地上約36メートルだが、調査で使用した観測ポールは最高でも30メートルで、正確なデータが得られなかった可能性がある。

 県は7月に始まる再生可能エネルギーの全量買い取りに向け、九州電力と値上げを含む売電契約見直しを進めたい意向。風力発電に詳しい九州大応用力学研究所(福岡県春日市)と協力して、設備の改善も図る方針だ。

=2012/06/07付 西日本新聞朝刊=


目的を見失ってないですか

もともと新規設備への投資を促すための再生可能エネルギー固定買取制度だったはずですが、既存の設備にまで買取対象を広げてしまっては、いったい何のための制度なのかわからなくなってきました。

すでにある設備の赤字補填に回すお金があるのなら、新規設備の設置を増やすほうに使ったほうが再生可能エネルギーは増えるはずです。

既存業者と新規業者の公平性に配慮が必要だという考え方もわからなくはないのですが、そもそも固定買取制度の目的は何だったのか、という基本理念がどこかに飛んでいってませんかね。

まあ結局のところ不公平感の最大の原因は、固定買取制度の買取価格があまりに高すぎることにつきます。RPS制度の対象の風車で発電した電気は10円なのに、すぐ隣のFIT対象の風車の電気は23円では、不公平に感じるのも当然でしょう。
(RPS制度では各種補助金を受けているので、実際につぎ込まれた金額はもう少し多いはずですが)

ということで今の高すぎる買取価格を、一刻も早く欧米並みの水準に引き下げることこそ、公平性の確保につながる近道ではないかと考えます。
関連記事
このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事をブックマーク


タグ : 自然エネルギー 風力発電 

最新記事
北海道の太陽光発電は、電力消費ピーク時間に発電量が0になる厄介者 user

FIT開始8ヶ月で、太陽光発電に7兆円の補助金が必要になったかもしれない user

北海道電力のメガソーラー受け入れ枠は競争入札で決めればよかった user

外国製メガソーラーにWTOのお墨付き、もう太陽光発電は住宅用だけでいい user

農業セクターへの助成総額を2倍に増やしたアメリカ、2/3に減らした日本 user

「攻めの農業」とは、補助金ジャブジャブにして安売り攻勢をしかけること user

聖教新聞を非課税にしようとがんばる公明党 -消費税の軽減税率導入論- user

過去の記事一覧
AD
FC2ブログ内検索
カテゴリから記事を探す
キーワードタグから記事を探す
RSSリンクの表示
リンク・転載・引用などはご自由にどうぞ
QR

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。