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脱原発-自然エネルギー推進-CO2削減の三兎を追って袋小路のドイツ



原子力の代替電源探しに苦労するドイツ

昨年古い原子力発電所を停止したドイツ。まだ残り半分の原子力発電所は稼動中だが、それでも電力の安定供給にかなり苦労しているようです。
[FT]原発停止の影響にもがくドイツ (2012年3月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

急な需要に対応できない送電網、あわや停電の危機

 昨年3月の日本の原発事故の直後に、ドイツの原発17基のうち8基が停止されて以来、ドイツの送電線は急な需要に対応するのに腐心してきた。2月初旬には、あわや停電が起きそうになった。

 閉鎖された原発の大半はドイツ南部にあったため、シュトゥットガルトとミュンヘン周辺の工業中心地は前例のない量の電力を北部の石炭・ガス火力発電所や風力タービンから調達し始めるようになった。

 ところが高圧送電網は、このような北部から南部への供給急増に対応できるようには設計されていなかった

遠く離れた発電所に余裕があっても、送電線がなければ電気を届けることができない。ということで、ドイツ南部での電力不足の可能性は、当初から指摘されていました。
【ドイツ】冬には南部で停電も=震災影響による原発停止で

昨年~今年のヨーロッパの冬は比較的穏やかだったようですが、それでも2月の寒波の時には電力が不足ぎみに。非常時用の古い発電所を稼動させるまでになっていました。

欧州各地で「計画停電」の恐れも

 2月初旬には、全国規模の停電に対する各社の懸念が欧州レベルにまで膨らんだ。フランスでの価格上昇を受け、折しも寒波がロシアからの天然ガス供給を滞らせた時に、エネルギー商社がドイツの電力を大量に輸出したためだ。

 従来であれば、送電網を運営する事業者は、原発事業者に発電量を増やすよう要請していた。だが、総計20GWのうち8GW分の設備が閉鎖された今、これは選択肢にはならなかった。結局、各社は約10日間にわたり、ドイツ南西部とオーストリアにある古い予備のガス火力発電所を利用した。

 「我々にはもう、危機時に対策を講じる余地を与えてくれる予備設備がない」とヴァインライヒ氏は言う。「もし大規模な発電所を失っていたらどうなるか?」 そうなれば、欧州全土の特定地域で電気を消す「計画停電」を余儀なくされるという。

いつでも発電所にトラブルが起きて止まる可能性などは常にあるわけですが、その時に「予備がもう無い」となると何も打つ手がなく、停電という選択肢しかなくなります。
九電・新大分発電所が凍結で停止 計画停電は回避

昨年の韓国で停電が起きた際も、最後には電力の予備率が0.36%の余裕しかなくなっていました。韓国は常に電力不足のため、発電所のメンテナンス等もギリギリのスケジュールでやらないといけないほどした。夏場のピークを過ぎて点検に入った直後に、残暑となって電力需要が急激に増えたことが、直接の停電原因でした。


地域間の電力融通が急増して不安定化

ドイツでは最近の自然エネルギーの増加に伴って、緊急調整の回数は右肩上がりに増加していました。さらに原子力発電所の半分停止で電力の調達先が大きく変わり、増加に拍車をかけているようです。

冬は何とか乗り切ったが・・・ 「冬は何とか乗り切った」。ドイツに4つある地域高圧送電網の1つを運営するオランダ企業テネットで、北部コントロールセンターの責任者を務めるフォルカー・ヴァインライヒ氏はこう話す。

 「だが我々は幸運だったし、今はもう、できることの限界に近づいている」

 ハノーバー郊外にある何の変哲もない低層ビルに拠点を構えるヴァインライヒ氏と同僚たちは2011年に、北海とアルプス山脈を結ぶテネットのケー ブルの電圧を維持したり、障害を回避したりするために、合計1024回も出動しなければならなかった。この出動回数は前年実績の4倍近くに上った。

ドイツ南部では原子力発電所が多く停止させられたため、地域の電力をまかないきれなくなりました。そのため、足りない分は他の地域から電気を持ってくることになるのですが、送電線に流せる電力量には限度があります。

また風力発電などの場合、風が強い時には大量の電力を生み出します。そのままでは電圧が上がりすぎてしまうので、代わりに火力発電の発電量を落として、電圧を安定させる。逆に風が止まってしまうと電圧が下がるので、代わりに他の発電所の出力を上げることになる。

いわゆるドイツ電気事業法(EnWG)13条に基づく緊急調整というもの。昨年2011年のテネット社の管轄内では緊急調整の回数が1000回を突破。ほぼ1日3回というペースですが、2010年に比べても4倍近くと大幅に増えていたようです。

政府の優遇策で再生可能エネルギーは増えましたが、その一方で送電網はほとんど民間任せで放ったらかしの状態でした。しかし結局は民間任せではいられなくなり、送電網にも補助金を出したり、環境アセスメントなど条件を緩和したりすることが考えられている。

本来なら送電についても必要なコストを計算しておき、費用をどう捻出するかも含め、セットで考えて進めるべきでしたが。


ついでですが、なぜドイツの送電線をオランダ企業が持っているかといえば、もちろん売ってしまったからです。さらに昨年のドイツの脱原発政策のために経営が悪化した電力会社が、送電網を切り売りし始めているようです。
送電網を売り初めたドイツ大手電力会社

下図で水色部分のドイツE-On社が送電線をオランダテネット社(tennet)に売却済み。RWE社、VE-T社も昨年相次いで送電部門を売却。
新エネ発電の大量導入が連系線へ与える影響に関する勉強会[PDF]

ドイツ電力網

EUは政治経済の統合を目指していますから、それほど問題ではないのかもしれません。逆にドイツ企業が他国の送電網を持つことも出来るでしょう。さすがに電力会社がロシア企業に買収される、という憶測まで出てくると考え物でしょうが。

日本でも数年前に空港の外国資本規制の問題がありました。水道やエネルギーや交通など、インフラ部門への外国企業の資本参加をどう扱うべきか、考えておく必要があるかもしれません。
【潮流 - 雲上快晴 】 : 日本の空港外資規制は先進的


周辺国への影響も

今までドイツから国外に輸出していた電力をドイツ国内で使うようになったり、他国が使っていた電気をドイツが吸い上げたりすると、その分どこかの国では電力が不足することになります。

昨年はドイツが原子力発電所の稼動期間を短縮することを決めたり、イタリアが原発の稼動を諦めました。その一方で、チェコやポーランド、フィンランドなど相次いで原子力発電の建設を進めています。
ポーランド、原発建設候補地3か所を選定

ヨーロッパ各国は電力をある程度は融通しあえるが、それも全体として十分な発電能力があっての話。ドイツが原子力発電所の半分を停止して発電能力が落ちた分は、どこかで発電所を増やして補うしかありません。
ドイツのソーラー発電業界に太陽はまだ輝くのだろうか?(google翻訳)

また、代替となる火力発電用の燃料も大量に買い上げることになるので、需要が増えただけ燃料の価格は上昇する。ガスや石油や石炭の価格が上がったので、相対的に原子力発電のメリットが大きくなることになりました。
「脱原発」世界中で奪い合い 天然ガス価格は上昇基調 : J-CASTニュース

シェールガス革命で何とかと言われていたアメリカでも、相次いで原子力発電所の建設を決めています。
新型原子炉:2基の建設・運転を認可 米原子力規制委


送電網の限界と追加費用

ヨーロッパは送電網が国外ともつながっていて、各国連係して電力の需要と供給を調整しています。そのため国内に限られず、場合によっては他国にも影響が出てきます。

昨年はドイツの電力輸入が増えたことや、風力発電、太陽光発電などの増加で電力の流れが大きく変化し、チェコがクレームを発していました。

ベルギーなどでも風力発電の影響から、安定を保つために移相変圧器などを設置して対応しています。もちろんそれだけの費用もかかりますし、変圧で電力ロスが発生するので、電気の一部を捨ててしまうような形になります。

ベルギー電力網の計画外潮流

このためにヨーロッパ全体で20兆円規模の投資が必要だとされていましたが、ドイツ国内に限っても送電網だけで電気料金8%分の費用が必要になる可能性があるということです。
EU、次世代送電網などエネルギーインフラ整備に22兆円以上が必要

ドイツ南部に発電所を増やせれば、送電網の追加は必要ないでしょう。しかし風力発電については、条件のいい風が吹くドイツ北部に集中しています。自然エネルギーにこだわるのならば、送電網等の追加費用の負担は必須となります。

自然エネルギーのインバランスコスト


自然エネルギー優遇政策のため、火力発電所が増やせない

ドイツでは再生可能エネルギーの固定買取制度(フィードインタリフ:FIT)が導入されています。そのため電気が余っているような状況でも自然エネルギーを優先して、全量買い取らなければいけません。

たとえば風が強くて風力発電の発電量が増えた時には、他の火力発電所を無理やり止めてでも、風力の電気を買い取る必要があります。天気がよくて、太陽光の発電量が増えた時も同様です。

この場合、止められた火力発電所は1kwhの電気も作れず、設備を遊ばせてしまうことになります。この間は1ユーロも稼ぎ出せなくなりますが、従業員の給料などはずっと払う必要があるので、その分だけ収益が悪化します。

いつ発電を止められるかわからず、収益の計算が立てられない。そんな状況で、わざわざ火力発電所を造ろうと考える事業者は少ないでしょう。代わりに、確実に買取ってもらえる太陽光パネルでも置いていた方が、経営者としては賢い判断です。

■ドイツ:ドイツ国内で石炭火力発電所の中止が相次ぐ[PDF]

 近年相次ぐ計画中止の主な理由には、地元住民や環境団体の反対運動が挙げられる。加えて、出力変動が激しい再エネ電源の急増により、石炭火力電源をフル稼働させることが難しくなり、それによって石炭火力の経済性が低下するリスクが出てきたのも計画断念の要因と考えられる。

政府系のエネルギー研究機関であるDENAの試算によれば、現状のペースでは、2020年までに約1,500万kW(石炭火力発電所約15基相当)の発電容量が不足することになるといわれている。


火力発電の冷遇状態を見直すしかないが

ドイツ政府は火力発電所の建設に対してインセンティブ(優遇策)を検討している、ということです。

たとえば火力発電所が停止させられた時に一定の補償金を出す、というような方法も考えられます。しかしこの場合、自然エネルギーへの補助金と、バックアップの火力発電への補助金で二重になり、電気代など国民の負担は上昇します。

現実的には、風力発電所や太陽光発電所から送電網に乗せる量を減らす、という方法になるでしょう。既にスペインでは、風力発電などの出力を落とす方法が取られています。ドイツでも最近は規模の大きい発電所には出力を制御する装置を義務付けていますので、すぐにでも出来ます。

ただしこの方法だと、止められることになる風力発電や太陽光発電の収益が減ることになります。自然エネルギー関係の業界団体や、環境団体などから反発は出るでしょう。

ドイツ政府の太陽光発電の買取量と買取価格のカットの際にも、太陽光発電業界や環境保護団体、緑の党などが反発していました。そのため、当初3月9日から補助金カットの予定が、4月1日に遅れることに。
太陽光買い取り大幅減へ 世界一の独、法案可決

■ガス発電所や送電線の増設にハードル

 投資家はガス火力発電所を建設したがらない。再生可能エネルギーが法律で優遇されているため、ガス火力発電所は風力発電を補完するものとして、たまにしか稼働しないかもしれないからだ。

追加の送電網敷設(政府機関によると、そのコストは電力料金を8%押し上げる可能性がある)は、計画段階で滞っている。

 政府は、予備のガス火力発電所を建設するインセンティブを検討していると言う。また、今夏には包括的な送電網計画を明らかにすると約束しており、長期的に電力価格は上昇しないと話している。

また火力発電にはCO2排出規制の問題もあり、ヨーロッパでは排出量取引も始まります。そうなるとますます火力発電は不利になりますので、CO2規制についても考え直す必要が出てくるかもしれません。

しかしドイツはCO2の規制を先導してきた国でもあり、京都議定書のように国際的な枠組みもあるので、簡単に変更できません。炭素税などの負担を軽減する、くらいが現実的でしょうか。


負担に耐えられるかどうか

既に自然エネルギーの買取だけでも13.5%ほど電気料金が上がっているドイツですが、送電網の追加でさらに8%ほど電気料金が押し上げられる可能性がある、とのことでした。

 だが、ハンブレヒト氏は、計画実行のスピードとユーザーにかかるコストについて心配している。欧州最大の工業国には「信頼でき、クリーンで手ごろなエネルギー供給」が必要だと同氏は言う。

安定供給できて、クリーンで、しかも手頃な価格のエネルギー供給、なんてものが実現可能なのかわかりませんが。こちらを立てればあちらが立たず、いわゆる"トリレンマ"なので、皮肉めいた表現にも聞こえます。

やはり電気代を上げるのが、脱原発のためには一番手っ取り早い方法かもしれません。電気が高く売れれば、発電所は元が取れる可能性が高くなるので、火力発電も自然エネルギーも増えるでしょう。送電線の追加にかかる費用も支払えます。

しかしドイツ国民の負担も重くなりますし、工業国ドイツでは電気代が上がりすぎると困りものでしょう。ドイツ企業の15%が国外への移転を検討・実行している、というドイツ商工会議所のアンケート結果も出ていました。
ドイツ商工会議所が行ったアンケート:「明日のエネルギーと資源」 [PDF]


原子力発電所の稼動延長の可能性も

■2015年の期限に間に合うか

 送電網の問題は、最後に残った原発9基が閉鎖し始める2015年までに解決する必要がある。送電線や発電所を計画して建設するまで6~7年はかかるとハンブレヒト氏は主張する。これを2~3年に短縮するには、進捗状況を監視し、次の対策を特定して実行を促す「コントロール・調整センター」が必要という。

 ハンブレヒト氏は、送電線敷設に対する地元の反対に触れ、「エネルギー転換は今なお実行可能だが、政治的に実施できるかどうかは分からない」と指摘。もっと大胆な実行計画をとらなければ、ドイツは一部の原発の運転を2022年以降も継続するしかないかもしれないと警鐘を鳴らす。

2011年の実績では、ドイツはまだ18%ほどの電気を原子力で発電しています。2015年からさらに段階的に停止する予定ですが、スケジュール的にはかなり厳しい。まだ昨年停止した分の埋め合わせにも苦労している状態です。

代替の火力発電所建設だけでも5年はかかります。送電線の敷設は10年単位のプロジェクトに。環境アセスを飛ばすなどすれば間に合うかもしれませんが、周辺住民から反対運動などが起こってしまうとさらに難しくなる。最悪、外国からの電力輸入に頼る、という手もありますが。

ドイツ政府は「長期的に電力価格は上昇しない」と主張していますが、実際にはそれなりの費用も発生することになるでしょう。

ロシアからのガス供給の問題もあって、ドイツでは2010年に方針を転換し、原子力発電所の稼動延長を決めていました。今回も課題を解決できなければ、方針を再々転換して脱原発スケジュールを遅らせる、という可能性は十分あるでしょう。
ロシア・ウクライナガス紛争 - Wikipedia


二兎どころか三兎も四兎も追いかけて袋小路に入り込む

環境保護、エネルギーの安定供給、電気代の負担。どれか一つだけとっても解決が難しい問題ですが、ここに脱原発まで加わっているわけで、ドイツにとって頭の痛い問題でしょう。

「二兎を追うもの一兎をも得ず」と言いますが、同時に3匹も4匹もウサギを追いかけるのですから、生半可なやり方では実現不能です。

ドイツでは補助金のカットで太陽光の導入量を抑制することが決まりました。袋小路から抜け出すため、自然エネルギーウサギを追いかけるのは後回しにする、という方針なのかもしれません。
ドイツ"脱太陽光"法案の可決と、太陽電池大手Qセルズ社の破産申請

古いタイプの原子炉を半分止めただけのドイツですらこれほど苦労しているわけですが、日本では一体どうなることか。
電力5社の燃料費、6割増の5兆円 11年度



「ドイツは電力政策を転換してフランスへ電気を輸出できる国になった」の真実

... エネルギーシフトの成功を喜ぶのは少し早すぎます。まだドイツの電力のおよそ6分の1は原発によるものです。エネルギーシフトの本当の試練は、これらの原発を稼働停止しはじめてから始まるのです。われわれは、今後10年かけて大変な問題に取り組んでいかなくてはなりません。

...自然エネルギー施設の拡充方針に反対する人はいません。しかし問題は建設地の確保で、特に南ドイツでは不足しています。現在建設中の発電所では不十分なのです。すべての関係者には、この冬の経験を通じて新規建設の必要性を認識して欲しいと思います。

...今多くの人は、ドイツが数週間フランスに電力を輸出したと喜んでいます。しかし2011年全体でみれば、ドイツはフランスに対してかつての電力輸出国から輸入国へと転落しています。都合のいい数字ばかりではなく、事実を見つめるべきです。

...極度の寒波とガス輸送の停滞により、予想を超えた困難に直面しました。...非常に逼迫した状況で、数日間は予備電力に頼らねばなりませんでした。万が一の場合もう後がないわけで、極めて異例な措置でした。

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タグ : 再生可能エネルギー ドイツ 

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